君は悪魔か少女になって

来世は高校球児になりたいOLの日記

アムウェイの勧誘を受けた話を聞いてくれ

人生で初めて「アムウェイ」の勧誘を受けたんですよ。

アムウェイといえばあの、マルチ商法で有名な日用品メーカーですね。ネズミ講のようにユーザーを増やし、ノルマを達成していくイメージの、あのアムウェイです。

あ、知らない人はネットで調べてくださいね。

 

そんな「学生時代、情報の授業で習ったことあるヤバイやつ」が今回、

急な角度で私の人生に突進してきた訳なんですが。

当然、私自身引っかかるとはつゆ程にも思ってないんですよ。得体の知れない嫌悪感あるし、悪評も知ってるからね。ナメプ。

だから、あ!これは勧誘だ!と気づいてすぐ、

 

「あ〜、あれね、はいはい。そういうのいいんで!」

 

と、なるはずだった。

 

全然ならなかった。

 

 

一つの芸術を見せられているかのような錯覚に陥った。あれは宗教。

 

ということで私がアムウェイと出会い、別れるまでの奮闘記をここに遺そうと思う(?)。

 

 

きっかけは営業先のお客さん。

母親くらいの年齢、小柄で、おしゃれで、よく笑う人。

第一印象は「素敵な年の取り方をしているなあ」で、いわゆる「丁寧な暮らし」をしているその人はいつも楽しそうに私の話を聞いてくれ、帰りには手作りのお菓子をもたせてくれたりするような人なんですね。

そもそも営業で神経すり減らしまくっている私にとって「好意的に接してくれるお客さん」というだけで好きになりがち(言葉にすると悲しい)。

最初は仕事帰りに着物の着付けを習いに行き、ご飯をご一緒した。

自然な流れで「料理教室もしてるの。よかったら来ない?」と誘われ、防御力ゼロと化した私は、ホイホイ出かける訳です。

 

そう、この「料理教室」こそアムウェイの巣窟だったんですよ。。。

 

(こんなの、騙されない人いるんすか?)

 

当日、うきうきでお気に入りのエプロンを持ってスタジオにいく25歳独身OL。

自己紹介もそこそこに、「7品つくりま〜す」って言われたあと、なんとなく会話に違和感を持って周囲を観察した結果、2品目の最中、器具に「Amway」っていう表記を見つけた時の絶望。想像できます?

もうレシピなんて1ミリも頭に入ってきませんよ。

最初から料理のコツよりも「使っている器具の有能さ」と「材料・調味料の素晴らしさ」についてのプレゼンを聞いているような時間だった。

そもそも、

ポイントカード作りますか?を断る勇気がなく永遠にたまらないポイントカードだけ増える私が、

一度も使ってないクレジットカードを退会しようとサポートデスクに電話してごねられ、そのまま5年以上年会費だけ払い続けている私が、

エステの体験行った時の勧誘を断れず破産覚悟で契約書にサインする私が、

冷え性を治したいな〜」と思ってふらっと立ち寄った漢方薬屋さんで4万円分お買い上げさせられ泣きながら帰った私が、

断れると思います?

無理ですよ。

もう絶望ですよ。

私の人生もはやここまで・・・両親・・・産んでくれてありがとう・・・

とおもいました。

 

とまあ、ここまでが従来私が持っていた「アムウェイ」という組織イメージとの葛藤だったんですが、ここからが本当の戦いだったんですよ(長いな)。

 

 

アムウェイの特徴として

料理の出来栄えや器具の素晴らしさを語る根底に、「みんなでハッピーになろうよ!」的な考えがあるんですね。

 

私が参加した「料理教室」は30代〜50代の既婚女性が集まっていたんだが、

「『運命の相手』は自分自身がやりたいことをやって、人生輝やかせて初めて出会うことができる人なんだから、「結婚して仕事辞めたいから良い人いないかな〜」という考えはナンセンス!」

であるとか、

「自分の人生から《旦那》と《子供》を引いて何も残らない人生はつまらない」

であるとか、

人生をより輝かせるための考え方を話し合う時間が多かったように思うんですね。

私の好みのタイプや将来設計、仕事観などを質問しては、

「素敵ね。自分のしたいように生きれば良いのよ」と認めてくれたんですよ。

 

現在、「上京したい」以外の感情を失っている私にとっては気持ちが軽くなる言葉が多かったし、恋愛観についても否定されることはなく「あなたの魅力をちゃんとわかってくれる人じゃないと勿体無いでしょ(笑)」と軽やかに自己肯定感を支えてくれた。

 

そう、お気づきでしょうか。

自己肯定感が低い人間こそ、このコミュニティを大好きになってしまうんですね。

 

そもそも紹介してくれたお客さん自身がそのへんお上手なんですが、

一緒にコーヒーを飲みながら「あんたは真面目すぎるからねえ」と私のことを笑ってくれ、

母親との関係が複雑なこともあり一層居心地の良い人だと感じるようになるのだった。

 

そう。

こんなに良い人たちが悪者なわけない・・・!

と、思うんですね(洗脳されてる)。

しかも本人たちも犯罪に加担しているという意識はなく、心の底から相手の幸せを思っているから勧誘するんだという構図に気づいた時、アムウェイの闇深さを実感した。

 

出来上がった食事を食べながらある女性は

「料理を学ぶのも大事だけど、こうやっていろんな世代の人が集まって話す機会は、仕事と自宅の往復だとなかなかないでしょ?気軽に遊びにおいでね」

と言った。

 

なんで私が仕事と自宅の往復しかしてないと決めつけてんだよとは思ったが、マジで言っていることはもっともなんだよなあ。その場にいる人間の言葉の節々に共感してしまう自分もいて、複雑だった。

それぞれの人間が女性として独立し、考えも漸進的でキラキラして見えた。たしかに「こういう風に生きたい」と思わせてくれるなにかがそこにはあるような感じがした。

 

 

まあそこからは笑ってしまうくらい畳み掛けるような勧誘になったので目が覚めたし、なによりそんな美しい会話の中、後ろの壁にはしっかりとノルマ表が貼ってあるのが怖すぎてわたしは永遠に怯えていた。

断りづらい空気ではあったが、断れず購入したまま自宅で独特な匂いを放ち続ける4万円の漢方薬を思い出し、決死の覚悟で「すみません、今日はやめておきます」と言った。

わかりやすく肩を落とされたし、ボスっぽい人は不満そうでもあったけど、

多分ここで私がこのコミュニティに入るとまじで抜け出せそうにないと思ったから良い判断だったと思う。本当に良く頑張った。えらい。

 

多分今後も良かれと思って勧誘は続くし、営業先のお客さんとしてのおつきあいは続くけど、今までにみたいに可愛がってもらうことはないと思う(ちょっと寂しい)。

 

 

結果的にはアムウェイのコミュニティ自体は素晴らしい面もあると思ったし、商品も魅力的に感じるところも多々あったが、ビジネスモデルとして勧誘・販売の仕方がやっぱり洗脳的で怖いと感じたし、手段もわりと強引で、アムウェイと名乗らず料理教室に呼ぶところとかが無理だなあ、という感想でした。

 

(あとで調べたら、事前に勧誘目的を告げずに公共性の低い場所(今回で言うマンションの一室みたいな)で勧誘行為を行うのは特定商取引に違反するみたいです。)

 

余談ですがいちばんすげえと思ったのは、

参加していた大人しそうな26歳女性、私と同じカモかと思いきや、

途中で「私がアムウェイの商品を買ってから人生が輝きだした話」を滔々と語り始めた時は

「いや!!!!!!お前も!!!!!!

敵やったんか〜い!!!!!!!」

と思いました。

 

 

拘束時間にして4時間。

全てが終わり、戦場を後に清々しい晴れた日の夕暮れの中、旧友に闘いの報告電話をしたら、

「いいなぁ、人生楽しそう」って言われました。最低な友達です。

 

しばらくは自分に優しくしてくれる人みんな「アムウェイの勧誘じゃ?!?!」という目で見てしまいそうですが、強く生きます。